企業が儲かりそうにない市場に参入する4つの理由

大企業は、多くの商品を抱えているが、利益に貢献している商品は、極々一部の商品であることが多い。
パレートの法則で言えば、20%の商品が利益の80%を稼ぎ出すのである。
極端な例を上げると、アサヒビールの利益の95%は、スーパードライが稼ぐ。 

では、アサヒビールは、全資源をスーパードライに集中させ、株式会社スーパードライになればいいではないかと素朴な疑問を覚えないだろうか。
その指摘は一理ある。少なくとも短期的には利益最大化の方法論となる可能性が十分にある。

それでは、なぜ、多くの企業は、究極の戦略をとらず、企業を救う可能性の低すぎる市場への新規参入を行うのかについてその理由を分析したいと思う。

理由1:リスクヘッジ

リスクヘッジ2
ひとつの代表的な理由は、環境の変化を見据えたリスクヘッジである。

これは、非常に説得力のある理由であり長期戦略的には重要な要素だが、それが有効に機能するためには留意すべきことがある。

大前提として、
 ①(既存事業に対して)意味のある利益規模を生む可能性がある。
100億円の事業をしている会社にとって最大でも1億規模にしかならない新事業は競争戦略的な意味はない。
 
②既存事業とリスクが類似していない。 
リスクがかぶる事業者はリスクヘッジにはならない。

③保有資産(リソース)に対するシナジーがある。
新規事業で勝利できる客観的な理由が必要。

これらを満たしてはじめて、リスクヘッジとして看板商品に投じる資源を他に振り向ける妥当性が生じるということだ。

結果的にうまくいかないという話が重要なわけではない。
結果論として、うまくいってしまうこともうまくいかないこともあるだろう。

ただし、多くの企業は事前の楽観的な予測においても企業戦略的にまったく無意味な市場に参入する。
 
事実上、上記の条件に適った戦略上意味のある新規参入は極々一部だと言えるだろう。

社内資源のすべてを既存事業に振り向けた方が利益を拡大できる可能性が圧倒的に高い。

理由2:守備戦略的な理由

本ナマ

もうひとつの理由は、守備戦略的な理由である。

新たな市場で、競合他社が、圧倒的なシェアを獲得し、圧倒的な利益を得ることで、より大規模に自社の得意な市場に攻め込んでくる可能性が高まる。
それを阻止するために、競合他社のシェアと利益を削るために新規参入を行うのである。
ビール業界で言えば、発泡酒市場に対して冷ややかであったアサヒが後発で参入した例などが当たる。
参入をしていなかったとするならば、発泡酒市場は、KIRINの独壇場になり、その莫大な余剰をもって、一番搾りへの大規模な戦略投資が行われ、スーパードライのシェアを奪っていった可能性も否定できない。

また、非戦略的な理由として2つの理由をあげる。

それは、虚栄心由来の売上至上主義と人事圧力シンドロームがある。

理由3:虚栄心由来の売上至上主義

売上至上主義

事業数を増やすことは売上規模の拡大に貢献する。

そして、統計的には、売上規模は、事業の存続と強い正の相関がある。
但し、それは、事業内での規模であって、資産を共有できない赤字事業への資源分散はむしろ命を縮める。

経営者は、どうしても自分の足跡を残すために、自慢するために、売上規模と新規事業を欲してしまう。

理由4:人事圧力シンドローム

人事圧力
人事圧力シンドロームとは、人事上の理由により競争戦略が歪む病のことである。

組織人は、出世を大きなモチベーションとしている。
そのため、組織の士気を維持していくためには、どうしても事業拡大・維持によるポストの維持・増設が求められる。

既存事業を大きくするよりも、事業を増やす圧力が存在するのだ。

特に、クリエイティブ人材は、自分の仕事を確保するために、新規事業を切実に求める。

これらの内部的な理由が、企業が戦略的意思決定を歪め、無意味な新規事業に参入する理由となりうる。

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