ドーナツシェア90%の「ミスタードーナツ」は、コーヒーの弱いカフェである。

日本のドーナツ店の歴史

日本ドーナツ元年は、1970年。
アメリカからほぼ同時に、2つのチェーン店が上陸した。

※余談だが、ケンタッキーフライドチキンが同年(1970年)。マクドナルドが1971年に日本進出を果たしており、1970年は、日本のファーストフード元年と言えるだろう。

ひとつは、ご存知 ミスタードーナツ
ミスド2

もうひとつは、ダンキンドーナツ
ダンキンドーナツ

※この2社は創業者同士が親族という関係にあり、本国アメリカでは、ダンキンドーナツがミスタードーナツを買収し、ミスタードーナツは存在しない。

ダンキンドーナツは、1998年に撤退し、以来、ドーナツ市場は、ミスタードーナツが、90%のシェア【1200億円市場(1177億円/2014年/富士経済調べ)】をもちほぼ独占してきた。

※地域産業であり、参入容易なローテク産業である外食小売店舗でのシェア90%というのは、製造メーカーのシェア90%とはワケが違う。驚異的な数字だ。
しかも、ドーナツというのは、誰でも知っているメジャーな商材である。
ピーク時のマクドナルドでさえハンバーガー市場で70%のシェアしかもたなかったことを考えるといかに特別なことかがわかるだろう。

そして、1998年以降のドーナツ業界は、ミスタードーナツの独壇場となり話題は長らく乏しかった。

2006年のクリスピークリームドーナツの進出は、かなり話題にのぼったが、数10店で頭打ち。
2016年には、すでに店舗縮小の方向に舵をきることが決まった。
クリスピー

業界の3位に位置づけられるのが、わずか20店舗の「はらドーナツ」というあたりをみても、いかに、1200店を超えるミスタードーナツが圧倒的な存在かが分かる。

そして、2015年。
コンビニのドーナツ参入というニュースが、ミスタードーナツの脅威として報道された。セブンイレブンが「セブンカフェ ドーナツ」の販売を開始、ローソン、ファミリーマートも後に続いた。
セブンドーナツ

個人的には、このニュースは、コンビニにとっても、ミスタードーナツにとっても決して大きな意味のあるトピックではないと思っている。

おでんやホットボックスは、温かくすぐに食べられるからレジ周りで扱う価値があるのであって、作りたてでもなく温かいわけでもないドーナツがレジ周り商品として意味のある規模に成長するとは思えない。
近日中に、菓子パンコーナーと同等の扱いになるものと予想している。
コーヒーとのセット売りを模索したのだろうが、コーヒーの成功は、コンビニ内の代替商品との比較だけでも必然的に選ばれるものであり、ドーナツが、スタッフへの口頭注文というハードルを越えて注文される必然性には乏しいと考える。

そして、後述するが、コンビニドーナツが、ミスタードーナツの市場を奪うことも相乗効果を発揮することもほとんどないと考える。

ミスタードーナツの業態分析

ミスタードーナツの業態分析をしておこう。

まず、興味深いのは、90%のシェアを誇り、文字通り日本のドーナツそのものと言ってもよい「ミスタードーナツ」に利益がほとんどないもしくは赤字であることだ。
裏を返すと、利益の出にくい産業構造こそが、高い参入障壁になっていたと言えるのかもしれない。
では、なぜ、ドーナツ市場を分析する中で、90%のシェアをもつミスタードーナツでさえ利益が出ないのかに解を出していこう。

まず、ドーナツ市場という分類の妥当性だ。

ミスタードーナツの競合企業はどこになるだろうか?

ミスタードーナツの業態を分解すると大きく2つの要素に分解できる。

イートイン業態とテイクアウト業態である。

どちらが主役とも言えないその2つのバランスのよさがひとつの特徴になっている。

ただし、これは後で詳述するが、強みという意味ではない。
強み・弱み両面の要素がある。

イートイン業態に関して言うと
「ドーナツが食べたい」というニーズ以上に、「少し腹が減った。少し休もう。どこかに入って話をしよう。」というニーズに応えていたのではないだろうか。
あるいは、ドーナツという商品以上に、駅前一等地の空間を売っていたのではないだろうか。

スターバックスが上陸し、カフェが爆発的に増える以前、ミスタードーナツは多くの駅で、(数少ないあるいは唯一の)気軽に入れる大型駅前軽食店であった。

それを踏まえると、ミスタードーナツは、カフェに分類すべき業態なのではないかということが見えてくる。
既存店舗同士の競合性ももちろんあるが、スターバックス等の大型カフェとは新店舗を確保する上で競合性は極めて大きいと言えるだろう。

特に、各カフェが、スウィーツを充実させるに伴い、徐々に両者の業態は近接してきた。

スターバックスが上陸し、カフェが爆発的に増えたことに原因を求めると、ミスタードーナツの長期的な業績低迷は合点が行く。
スタバ

次に、テイクアウト業態について考える。

スウィーツテイクアウト店が競合になるだろう。
投資ハードルが低いため、比較的個人店が多い業態だが、チェーン店としては、コージーコーナー(約400店)やビアードパパ(約180店)が直接的な競合になる。
コージー

ミスタードーナツは、
1.テイクアウト用販売窓がないので、テイクアウト専業店と比較すると注文しにくい。
2.単品注文がしにくいため、食べ歩き需要には応えきれていない。 自己消費需要よりも土産需要が中心。
3.あらゆるスウィーツ店テイクアウト店の中で、もっとも多種商品がある。
ということが言える。

テイクアウト専門店あるいはテイクアウト用の販売窓を設けている店舗と比較すると注文しにくいオペレーションになっている一方で、商品種の多さが、ひとつの強みになっていると言えるだろう。

コンビニドーナツとの競合性で言うならば、このテイクアウト業態が当てはまるわけだが、コンビニドーナツは自家消費、ミスタードーナツは土産消費という時点で、仮にコンビニドーナツが成功したとしても、非常に競合性は薄いと考えている。

イートイン、テイクアウト両業態をバランスよくまたにかけているというミスタードーナツだが、裏を返すとどちらも中途半端。

ドーナツという商品のシェアが90%であることは、紛れもない事実であるものの
イートイン業態をカフェに分類するのであれば、業界3位の売上規模。 

その売上規模は店舗数・規模と立地に支えられるものだが、地域内の店舗間競争においては、他の大型カフェに水を開けられているのではないかと推定される。

陳腐化した内装やコーヒーの品質を踏まえると、カフェという定義の中では決して魅力的には思えないのだ。

「勝利のない店舗をかき集めただけの巨人」になってしまっているのではないか。

一方、テイクアウト業態としては、店内注文のため、注文率が上がりにくいというオペレーション上のロスがある。
特に、単品テイクアウトのハードルは著しく高めている。

これらの市場とのミスマッチが、大きくも低収益の業態につながってしまっていると思う。

ミスタードーナツの改革案

ミスタードーナツの改革案として3つ挙げたい。

1.カフェの自覚とコーヒーへの注力

まずは、ニーズ視点から捉えた場合、カフェであるという自覚を持つことだ。
カフェという自覚がないが故に、ミスタードーナツのコーヒーは話題に上ることもなく、ドーナツと一緒に(インスタントの)中華を出すというブランドの質を大きく減退させる掟破りをしてしまっている。

※クリスピークリームドーナツの参入も、ミスタードーナツの品質で90%のシェアをもてるドーナツ市場というブルーオーシャンという見誤りがあったのではないかと思う。
実際は、勢いのある企業が乱立しているカフェ市場という真っ赤なレッドオーシャンだった。

カフェという自覚をもって最初にやるべきことは、コーヒーに徹底的に注力することだ。
品質そのものよりも相応のブランディングが求められるだろう。
もちろん自社で、プロデュースをしていくという選択肢は残されているが、ミスタードーナツのコーヒーに信頼を持たせることは容易ではない。

もっとも早い方法は、コーヒーに定評のあるカフェと提携をして、そのブランドのコーヒーを出していくことだろう。
カフェにとっても、駅前の一等立地に一気に自社のコーヒーを提供できるまたとない機会となる。
既存カフェに対して、ドーナツ製造ノウハウを提供できるという相乗効果も含めて、非常に有益な提携になるだろう。

具体的には、スターバックス、ドトール、タリーズ(伊藤園)、コメダ珈琲が、提携候補として可能性がある。
タリーズ

2.店内製造・出来立ての演出

ミスタードーナツの圧倒的な強みでありながら、全然伝わっていない価値がある。
それは、店舗内での製造販売業態だということだ。
スケールメリットを放棄して、店舗製造を行っているにも関わらず、それを店舗で感じることはほとんどない。
恐らく店舗製造がされている認知度は決して高くないだろう。
ミスド製造

作っているところを見せるわけでもなく、出来立てをオススメするわけでもない。
ただ、センター工場から送られてきたと言われても何の違和感もない味も素っ気もない陳列がされているだけだ。

今後の課題は、製造販売業態であることを上手に伝える演出と出来立てをうまく活用していくことだろう。
工場で食品を買う価値は高い。

3.テイクアウト専門店の開発

前述の通り、店内でのテイクアウト注文には一定のハードルがある。衝動買いができない。 特に、単品・少量注文には抵抗が大きい。

ショッピングセンターや駅でたまにミスタードーナツのテイクアウト専門の臨時屋台のようなものを見かけるが、あれは、ユーザーにとってコンビニのドーナツを買うこととなんら変わりがない。
それほど売れないだろう。

あくまでドーナツ屋としてのミスタードーナツの中核的競争要因は、製造と販売が一体化していることだ。

工場機能のあるテイクアウト専門店は、従来店よりも衝動買いを誘い、効率的な業態になる可能性がある。
店舗サイズもより小規模で済むため、出店適性場所も格段に広がる。
店舗の撤退も、既存業態に比して極めて容易だ。

また、既存店舗にテイアクト用窓を別途設けるのも、注文率を劇的に高めるひとつの方法だろう。

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